年輪経営のこと
満身総身に、縦横無尽に受けた人生の創(きず)を通してつかまれた真理でなければ、真の力とはなり難い。
~『森信三先生 一日一語』(寺田一清)より
しんどいこと、辛いことありますが、それが自分の力、他者への思いやりの糧になると思えれば、耐え難きも耐えられる。
そう信じたいです。きれいごとかもしれませんが。。。
きれいごとだと達観するか、実直に実践するか、各人の人生ですね。
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昨年、7月に長野県伊那市にある「伊那食品工業」を視察し、同社の塚越会長のお話を聞く機会がありました。
カンブリア宮殿という民放番組にも出演されたことがあるということなので、ご存知の方もあるかもしれません。
ちなみに、僕が東京で生活しているアパートは、新三種の神器である冷蔵庫、洗濯機、テレビいずれもありません。これについては、また別の機会で。
さて、塚越会長の理念で特徴的なのが、掲題の、
「年輪経営」
同じ名前の著書も出ています。
その「年輪経営」について僕が理解している限り、ごく簡単に説明すると、
「木の幹が成長するように 毎年ゆっくり身の丈にあった成長を続けていく経営」
ということなのですが、
今までの僕の営業活動で目指していたもの、お付き合いしていた業界は真逆でした。
「如何に効率良い仕組みを作って大量生産し、どれだけ稼ぐか。」
自分も協力メーカーさんもそれを良しとし、逆に小ロットの仕事には見向きもしていなかった。極論すれば、そういう環境でそういう価値観で仕事してきました。
そして、その環境、価値観の中で結果を残せば、会社も評価してくれたのですが、その過程で犠牲にするものがあまりにも多いのではないか、数年前からそう感じ始めていました。
・大量生産するために協力メーカーさんが行う大きな設備投資の費用
⇒需給バランスが崩れる時に、大きな負担。最悪、無用の長物となる。
・短期間で効率的な商品開発をする為に、関係者が費やす時間、労力(工数などと呼びますが)
⇒健康を崩したり、過度のストレスを受けたり、家族と過ごす時間を犠牲にする。
いずれも短期間で効率よく大量生産し、大きな成長を目指そうとする場合に伴うものです。
大きな設備投資で資金繰りに苦労する協力メーカーさん、休日返上で海外に張り付き働く同僚たち、大量生産というお祭り騒ぎのなか、本当にこれで皆が幸せなのか、そういう疑問を感じることが多くなっていました。。。
そんな中出会った伊那食品工業・塚越会長の経営理念である「年輪経営」。
伊那食品工業は「かんてんぱぱ」という商品名で、寒天を生産する食品メーカーさんです。
数年前にTVで「ダイエットにいい寒天」ということでブームになったとき、塚越会長は悩みぬいた末、
「大幅な設備投資はしない=ブームに乗らない」
という経営判断をしたそうです。
「流行は必ず終わる。その時に必ずしわ寄せがくる。」
そのしわ寄せというのは、今では当たり前になっている「リストラ」ですね。
塚越会長はまた、
「遠きをはかる経営」
とも言っています。これは二宮尊徳から影響を受けているそうです。
確かに、二宮翁夜話(下)に、
「遠きをはかる者は富み、近きをはかる者は貧す」(ちょっと表現違いますが、あしからず)
という一節が出てきます。
兄とも会社のあり方について、この「年輪経営」「遠きをはかる経営」には大いに賛同するものがあり、そこに更に僕たちなりの理念を持っていければいいね、と話しています。
伊那食品工業は、長野県伊那市という自然豊かな地方の小さな町にあります。
そこに近年、全国から数千人の入社希望者が応募してくるそうです。
尊徳に影響を受けた「年輪経営」。
日本人に一番合致した経営のあり方ではないかと感じています。
合掌